歯科コラム
Columnホワイトニングシートの効果とは?意外な落とし穴も
ホワイトニングシートは、歯の表面に貼るだけの手軽なホワイトニングとして知られています。しかし、国内では販売が認められていない製品もあり、誤った使い方をすると、歯に悪影響を及ぼす恐れがあります。
本コラムでは、ホワイトニングシートの効果やメリット・デメリット、知っておきたい落とし穴を解説します。ホワイトニングシートのメリットやデメリットがわかれば、自分に適したホワイトニング方法を選べます。ぜひご参考にしてください。
ホワイトニングシートとは
ホワイトニングシートとは、歯の表面に直接貼り付けて歯を白くする、薄いシート状の製品です。ホワイトニングテープとも呼ばれています。
多くのホワイトニングシートには、歯の漂白作用がある過酸化水素が約10%含まれています。この過酸化水素は、歯の表面に付着した色素を分解することで歯を白くする効果が期待できます。
しかし、日本では過酸化水素の濃度が6%を超える製品は、薬機法により一般には販売が認められていません。
国内で市販されているホワイトニングシートは過酸化水素を含まず、洗浄成分によって歯の表面の着色汚れを落とすことを目的としています。
一方、海外製のホワイトニングシートは、インターネットなどで個人輸入できますが、日本の法律で安全性が保証されていないため、使用には注意が必要です。
シートの使い方
シート表面のフィルムをはがし、歯に貼りつけます。所定の時間をおいてホワイトニングシートをはがし、軽くブラッシングします。
シートを貼る際は薬剤が歯茎や口腔内につかないように注意してください。歯並び次第でシートが均等に貼れず、効果が偏ることがあります。
必ず製品の注意事項を確認し、1日20分を数日間続けるといった、製品の使用方法を厳守しましょう。
歯にもたらす効果
ホワイトニングシートは一般的に以下のような成分が含まれており、それぞれ効果が異なります。
- 過酸化水素
- 炭酸水素ナトリウム
- フィチン酸
- シリカ
過酸化水素が含まれるホワイトニングシートは、歯を漂白して明るくする効果が期待できます。
炭酸水素ナトリウムは重曹のことで、歯の表面のプラークを除去します。
フィチン酸は米ぬかから抽出した成分です。キレート作用により、歯の汚れを分解して落とします。
シリカは研磨作用があり、歯の汚れを落とすのに効果的です。ただし過度に使用すると、歯のエナメル質を傷つける場合があります。
過酸化水素以外の成分では、漂白作用は期待できません。ホワイトニングシートは成分を確認し 、目的に合った製品を選びましょう。
ホワイトニングシートのメリット
ホワイトニングシートを使用するメリットとして、以下の4点が挙げられます。
- 自宅で手軽にできる
- 費用を安く抑えられる
- 市販で手に入りやすい
- 短期間で効果を実感しやすい
各項目について解説します。
自宅で手軽にケアできる
ホワイトニングシート最大の魅力は、自宅で簡単に歯を白くするケアができる点です。
貼って放置するだけのシンプルな使い方であり、特別な機器や知識は不要、さらに忙しい人でも「ながらケア」が可能(読書しながら、家事をしながら など)歯科医院に通う時間が取れない人にとって、大きなメリットになります。
費用が抑えられる
歯科医院のホワイトニングに比べると、費用が圧倒的に安く済むのも特徴です。
ホワイトニングシートは、製品にもよりますが1,000円台から販売されています。過酸化水素が使用されている海外製の製品でも14日分で約7,000円ほどで購入できます。
一般的に20,000円を超える歯科医院でのホワイトニングと比較すると安価で、手軽に試せる価格帯と言えます。時間や費用の面で手軽に始められる点が、ホワイトニングシートの大きなメリットと言えるでしょう。
市販で手に入りやすい
ホワイトニングシートは、以下のような場所で気軽に購入できます。
- ドラッグストア
- ネット通販
- 一部のバラエティショップや家電量販店
価格も比較的リーズナブルで、数千円程度から始められる商品が多いため、「まずは試してみたい」という方におすすめです。
短期間で効果を実感しやすい
使用する商品や個人差にもよりますが、数日〜1週間程度で少しずつ歯の色の変化を感じることができます。特に以下のような場合に効果が出やすいです。
- コーヒーや紅茶などによる軽度の着色
- ワインやカレーなどの食生活によるステイン
毎日鏡を見る習慣のある方は、数回の使用で「少し白くなったかも?」と感じやすい傾向があります。
ホワイトニングシートのデメリット
ホワイトニングシートのデメリットは、主に下記の5点です。
- 効果に個人差がある
- 歯ぐきや口内への刺激
- 効果の持続性・即効性が低い
- 効果が現れにくい
- 歯に悪影響を与えるリスク
それぞれのデメリットをご紹介します。
効果に個人差がある
ホワイトニングシートの効果は「歯の着色の原因」や「歯質の個性」によって大きく左右されます。
例えば、コーヒー・紅茶・ワインなどの表面の着色(ステイン)には比較的効果が出やすい一方、加齢による黄ばみや、神経が死んだ歯の黒ずみなどにはほとんど効果が出ません。
遺伝的に歯が黄ばんでいる人も、変化が少ないことがあります。
さらに、市販シートは安全性の観点から、過酸化成分の濃度が低く設定されているため、歯科医院でのホワイトニングに比べて白さの実感が出にくいといえるでしょう。
歯ぐきや口内への刺激
シートが歯ぐきや粘膜に触れたまま薬剤がしみ出すと、以下のようなトラブルが起きることがあります。
- 歯ぐきが赤くただれる・腫れる・ヒリヒリする
- 唇や口の内側に薬剤がついて荒れてしまう
- 使用後に白く変色したり、皮がむけるような症状が出ることも
とくに歯ぐきが敏感な方、口内炎ができやすい方、アレルギー体質の方は要注意です。このような刺激を避けるには、使用時間を短くする、必要以上の頻度で使わない、歯ぐきにつかないように丁寧に貼るといった配慮が必要です。
効果の持続性・即効性が低い
ホワイトニングシートは即効性があるように見えて、一度で劇的に白くなるわけではありません。
多くの場合、数日〜数週間にわたって継続的に使用しないと効果が実感できないという声が多いです。
さらに、効果は一時的なもので、日常生活で再び色素沈着していく、タバコや色の濃い飲食物の影響を受けやすい、歯科医院でのプロフェッショナルな施術に比べると、白さの定着力が弱いといった特徴があります。
効果が現れにくい
ホワイトニングシートの特性上、歯に均等に密着させることが難しく、期待する効果が得られない場合があります。
特に、歯並びが不揃いな方はシートが完全にフィットせず、ホワイトニング成分が届かない部分が生じるため、歯の色がまだらになる可能性があります。
また、日本で市販されているホワイトニングシートは、歯の表面の着色汚れを落とすことを目的とした製品が多く、歯そのものの色を漂白する効果は期待できません。歯の表面に付着した飲食物による着色やくすみを洗浄成分で浮かせ、除去することで歯を明るく見せるものです。歯の内部から色を変化させる漂白作用は含まれていないため、根本的なホワイトニング効果を求める方には不向きです。
さらに、海外製品の中には過酸化水素を含むものもありますが、濃度によっては日本の規制基準を満たさない場合があり、自己判断での使用はリスクを伴うことがあります。
ホワイトニングシートを使用する際は、製品の成分やご自身の歯の状態を考慮し、過度な期待をしないことが重要です。
歯に悪影響を与えるリスク
ホワイトニングシートを使う際は、リスクも知っておく必要があります。
- アレルギー反応を起こす
- 知覚過敏を起こす
- 神経を抜く必要が生じる
ホワイトニングシートに含まれる薬剤が原因で、アレルギー反応や知覚過敏が起きる可能性があります。
特に、歯に虫歯や歯周病がある場合、または歯が欠けていたり割れていたりする部分に薬剤が付着すると、痛みや炎症を引き起こすことがあります。
日本人の歯は欧米人よりもエナメル質が薄いため、海外製の高濃度な過酸化水素を含む製品を使用すると、知覚過敏が強く出たり、歯の神経にダメージを与えてしまう可能性も指摘されています。高濃度ホワイトニング剤で常時歯がしみ、神経を抜く必要が出る場合もあります。
また、自己判断で長時間使用したり、使用頻度を守らなかったりすると、歯や歯茎にさらなるダメージを与える恐れがあります。 これらのデメリットを避けるためには、製品の注意事項をよく確認し、正しく使用することが非常に重要です。
ホワイトニングシートの落とし穴
ホワイトニングシートの危険性を解説します。以下の方は過酸化水素水を含む製品を使用しないでください。
- 虫歯や歯周病がある
- 歯の欠けや割れがある
- 妊娠中や授乳中
- 無カタラーゼ症
虫歯や歯周病があると、歯茎の炎症や痛みが生じる可能性があります。歯の欠けや割れがある場合も、ホワイトニングシートでしみたり、痛みがでる可能性があります。
胎児・乳児への影響を避けるため、妊娠中や授乳中の使用は避けましょう。
無カタラーゼ症の方は、過酸化水素を分解できないため、ホワイトニングシートを使用すると大変危険です。進行性口腔壊死が起こり、口腔内がただれるリスクがあります。
おすすめのホワイトニング方法
ホワイトニングシートのなかには、自分で扱えないものや、効果が期待できないものがあります。ホワイトニングは歯科医院での施術が安全です。
ホームホワイトニングは、歯科医院でホワイトニングトレーを作って、医師の指示のもと自分で行います。1日数十分から2時間、1か月ほど装着します。
オフィスホワイトニングは歯科医院で受けるため、30%前後とホワイトニングシートに比べて高い濃度の過酸化水素を使用でき、効果も出やすい施術です。
歯を白くしたい方は当院にご相談ください。ホワイトニング前には歯のクリーニングを行い、施術後も定期的にケアすることで口内環境を保てます。
以下のコラムでは、ホワイトニングの持続期間に関わる食事について解説しています。ぜひご参考にしてください。
- Q1:シート以外に、手軽に買えるホワイトニング製品はありますか?
- A1:ホワイトニング効果をうたう歯みがき粉やマウスウォッシュが販売されています。日本で売られている製品は過酸化水素を含まず、歯の汚れを落とすにとどまります。
- Q2:しばらく歯医者に行っていなくても、ホワイトニングを受けられますか?
- A2:まずは歯の状態を確認して、必要であれば虫歯や歯周病を治療します。丁寧にカウンセリングを行い、予算や生活習慣に合った方法を紹介するので、ぜひご相談ください。
- 歯科コラム 記事一覧
-
- ホワイトニングの持続期間
- 虫歯が発生する原因
- 虫歯は予防できます
- 虫歯を放置していると…
- 虫歯が進行してしまったら根管治療が必要です
- ホームホワイトニングとオフィスホワイトニングの違い
- ホワイトニング歯磨き粉の効果は?
- ホワイトニングとクリーニングの違い
- オフィスホワイトニングで使うライトとは?
- インプラントの被せ物に使える素材について
- 予防歯科の重要性について知ろう
- PMTCって何をするの?
- ホワイトニングの安全性について
- ホワイトニングの注意点
- ホームホワイトニングのススメ
- ホームホワイトニングを始めるには
- 知覚過敏のメカニズム
- 虫歯治療と根管治療
- 虫歯治療の流れ
- 歯を失う最大の理由は歯周病です
- 全ての治療を総合的に見るメリットは
- 当院で行なっている無痛治療について
- 当院で行なっているレントゲン撮影について
- ホワイトニングの効果期間
- 痛みの少ない歯科治療について
- 歯周病の痛みについて
- 重度な虫歯には根管治療
- 根管治療の通院回数
- 定期健診の重要性
- 通院が難しい方には訪問診療があります
- 小児歯科で行なう予防治療について
- 歯科治療で使用するレントゲンについて
- 歯周病の内科治療について
- 歯科医院で行なうオフィスホワイトニングとは
- 予防歯科で年齢に応じたケアをしよう
- 予防歯科はいつから始めるべきか
- 予防歯科におけるセルフケアのポイント
- 予防歯科でできる口臭対策
- 予防歯科の効果を高める食事と生活習慣
- 被せ物や詰め物の材質に関して
- 全身の健康維持に重要な予防歯科
- PMTCの手順と効果
- ホワイトニングにリスクはあるの?
- ホワイトニングで起きるトラブルとは
- 歯医者を探すときに知っておきたいこと
- 歯科医師に聞く、虫歯や歯周病の原因と予防法
- 口腔外科で顎関節症の治療を受けるなら
- 親知らずを抜歯する前にチェックしておきたいこと
- お子様の歯科検診を受けるメリットと注意点
- 予防歯科の受け方について
- 小児歯科はリラックスして受けられることが大切です
- 小児矯正は成長期にあわせて始めましょう
- 歯が並ぶスペースを広げる床矯正について
- 審美歯科治療にできること
- 訪問歯科でできる治療とできない治療について
- 訪問歯科の流れと費用について
- 訪問歯科における感染予防対策について
- 訪問歯科の今後の展望と課題について
- 訪問歯科で使用する器具や材料について
- 歯周病が引き起こす全身の健康への影響
- 歯周病の初期症状とケアの方法
- 歯周病は老化や美容と関係性がある?
- 歯周病による歯の欠損を防ぐため
- 歯周病になりやすい人となりにくい人の違いとは?
- 入れ歯の適切なお手入れ方法と注意点
- 入れ歯に慣れるためのコツとトレーニング方法を紹介
- 入れ歯の費用と保険の適用について
- 無痛治療を受ける前に知っておきたいこと
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- 歯周病の発生原因について
- 喫煙と歯周病 歯周組織への悪影響とは
- 歯周病は見た目にも影響する?
- 歯周病には定期的なメンテナンスが必要
- 歯周病の治療方法について
- 入れ歯の寿命と交換時期のサイン
- ホワイトニングとは
- ホワイトニングの種類とそれぞれの特徴
- 歯周病治療の費用について
- 歯周病と心臓病の関係性とは
- 総合歯科医療とは
- 銀歯のリスクや白い歯にする審美的治療を解説
- 当院における予防歯科の特徴
- 審美治療をおすすめする理由
- ホワイトニングの後はどんな食事をしたらいいの?
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- 入れ歯の種類と費用相場
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