歯科コラム
Column治せる?治せない?歯が割れたときの治療の限界と現実
突然歯が割れると、驚くと同時に 「歯は治る?」 「抜くしかない?」 と不安を抱く方は多いのではないでしょうか。
虫歯や歯周病と並んで、歯が割れる「破折(はせつ)」も歯を失う原因の一つです。わずかなひび割れでも放置すると症状が進行し、抜歯が必要になるケースも少なくありません。
本コラムでは、歯が割れたときに起こる症状や原因、治療の選択肢を紹介し、治せるかどうかの判断基準についても詳しく解説します。
「歯が割れてしまったけど、どう対処すればいいかわからない」 とお悩みの方は、ぜひ最後までおご覧ください。
歯が割れたら治せる?治せない?
歯の「破折」は大きく以下の2つに分類され、割れ方や程度によって治療の可否や方法が異なります。
- ・歯冠破折(しかんはせつ):口を開けた時に見えている歯の部分の破折。治療できる可能性が高い
- ・歯根破折(しこんはせつ):歯ぐきの中に埋まっている歯の根っこの部分の破折。基本的に抜歯となる
歯冠と呼ばれる歯の表面が欠けたり割れたりした状態は「歯冠破折」と呼ばれ、一般的には治療が可能です。
破損部位が小さければ歯科用のプラスチック材料(レジン)で対応できるケースもあります。しかし、大きく割れたり欠けたりした場合には、詰め物(インレー)やかぶせ物(クラウン)による補綴(ほてつぶつ)を使用した治療が必要です。
一方、歯の根元(歯根)まで亀裂が入る「歯根破折」では、治療法が限られています。破折部位から細菌が侵入しやすくなり、周辺の歯ぐきや歯に細菌感染を引き起こすなどの悪影響を及ぼします。
歯根破折は抜歯するケースが一般的ですが、状況によって治療が可能です。具体的な治療法は後述の「歯が割れた時の治療法」 で解説します。
歯が割れる原因と割れた時の症状
歯の破折を放置すると、割れた歯だけではなく周囲の歯も失いかねません。歯が割れる原因や症状を理解して、早めの対処をしましょう。
歯が割れる原因
原因は多岐にわたりますが、特に多いものとして以下の4つです。
- ・進行した虫歯や歯周病
- ・外傷や事故による強い衝撃
- ・歯ぎしりや噛み合わせの悪さ
- ・抜髄による歯の脆弱(ぜいじゃく)化
虫歯や歯周病が進行すると、歯が破折することがあります。
たとえば、虫歯治療で入れた金属の土台が合っていない場合や、歯周病によって歯を支える骨が溶けて歯がぐらついている状態では、咬む力に耐えきれず、歯が折れてしまいます。
外傷や事故によって強い衝撃うけた場合も、歯が破折してしまうケースがあります。
特に接触の多いスポーツをしている方は注意が必要です。マウスガードを着用することで歯へのダメージを軽減でき、ケガの予防にもつながります。
また、歯ぎしりや食いしばりによって歯に過度な力がかかると、破折のリスクが高まります。
無意識のうちに歯を食いしばってしまう癖があったり、噛み合わせが悪かったりすると、一部の歯に負担が集中してしまいます。
歯ぎしりや食いしばりのリスクを軽減するためには、睡眠時にマウスピースを使用したり、矯正治療で噛み合わせを整えたりする対策が効果的です。
さらに、抜髄(ばつずい)とは、歯の神経を取り除いて他の歯に虫歯が広がらないようにする処置です。進行した虫歯において必要な処置ですが、歯が脆くなるデメリットがあり、破折のリスクが高まります。
歯が割れた時の症状
歯が割れた時に生じる主な症状は以下のとおりです。
- ・噛んだときに痛みを感じる
- ・歯ぐきが腫れる
- ・違和感がある
- ・臭いがある
神経がある通常の歯が破折した場合、非常に強い痛みを伴います。
一方、抜髄している歯が破折した場合、神経を取り除いているため痛みを感じにくく、気づきにくい傾向にあります。痛みが出る頃には歯ぐきが腫れ、感染が進行しているケースが数多くあり、注意が必要です。
歯が割れた時の治療法
破折の部位や程度により適切な治療法が異なります。歯冠破折と歯根破折にわけて解説します。
歯冠破折の場合
歯冠破折の治療法は以下の2つです。
- ・詰め物や被せ物、レジンを使用した修復
- ・歯冠長延長術(クラウンレングスニング)
大きな亀裂や欠けがある場合、詰め物や被せ物で破折部を覆うように治療します。レジンを使用した修復は軽度の場合に適用されます。
破折部が歯ぐきより浅い場合には、歯冠長延長術(クラウンレングスニング)で抜歯せずに治療できる可能性があります。歯ぐきを切開し、歯ぐきの中に残っている歯を引き上げ、補綴物で修復する方法です。適用には細かな条件があります。
治療に使用する詰め物や被せ物については、以下のコラムもご参照ください。
歯根破折の場合
歯根破折では前述したように治療が難しく基本的に抜歯が必要です。しかし、ケースによっては以下の治療方法が適用できることもあります。
- ・口腔内接着法
- ・口腔外接着再植法
口腔内接着法は、破折範囲が限定的な場合に口腔内で接着処置を行う方法です。一方、口腔外接着再植法は一度歯を抜歯し、破折部を接着・殺菌処理後、再度元の位置に戻す方法です。一定期間、歯を安定させるための固定が必要です。
治療法は、歯がどこでどのように折れているのか、破折がどの程度広がっているかなど、口腔内全体の状態を総合的に見てから判断されます。
歯が割れた時の対処法
歯が割れた場合は、できるだけ早く歯科医院を受診することが最も重要です。状態によっては割れた歯の破片を再利用できるため、捨てずに持参しましょう。以下の点に注意して保管してください。
- ・乾燥させないよう注意し、牛乳に浸して保管する
- ・水道水で洗わない
乾燥すると歯根膜などの組織が変性し、歯の再利用が難しくなります。牛乳には細胞を保護する作用があり、応急的な保存に適しています。一方、水道水での洗浄は再植の成功率が低下するおそれがあるため避けてください。
また、患部には触れず、刺激を与えないよう安静にします。痛みが強い場合は市販の鎮痛薬の使用も可能です。しかし、できるだけ早く専門的な診察を受けてください。
割れた歯は必ずしも治療可能とは限らず、抜歯が必要なケースも多くあります。そのままにしておくと周囲の歯に悪影響を及ぼすため、早めにかかりつけの歯科医院を受診してください。
当院では、抜歯後の抜けた部分を補うための治療を行っています。破折で抜歯をした場合でも対応可能です。ぜひご相談ください。
- Q1:軽いひび割れなら自然に治ることはありますか?
- A1:歯のひび割れが自然治癒することはありません。軽いひびでも放置すると、そこから状態が悪化する可能性があります。しかし、早めに治療を行うことできれいに修復できるケースもあります。軽いひび割れでも早めに歯科医院を受診しましょう。
- Q2:乳歯が折れました。永久歯が生えてくるまでそのままでも大丈夫ですか?
- A2:乳歯が折れた場合、そのままにしておくと永久歯に影響を及ぼす可能性があります。一度、歯科医院を受診してください。欠けた歯が残っていれば持参しましょう。
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